日本皮膚科学会のガイドライン、なんと70ページ!他の皮膚病のガイドラインとはわけが違います。小室文書だって28ページだっていうのに。ハアハア、それではスタートしましょう。ちなみに赤文字重要、ピンクは私のまとめ。


アトピー素因とは?

①家族歴・既往歴に気管支喘息、アレルギー性鼻炎・結膜炎、アトピー性皮膚炎のうちいずれか、あるいは複数の疾患があるか。

または

②IgE抗体を産生しやすい素因

ここ大事!アトピー素因があるかどうかって、皮膚炎だけじゃないんだよ~。家族に 気管支喘息、アレルギー性鼻炎・結膜炎の人がいたらあなたはアトピー素因があるかもしれないんだよ~ってこと。


原因

角質の異常         皮膚の最も表面の角質は、皮膚内の水分の漏出、水分保持、生体防御の役目があり、バリアを形成している。しかしアトピー性皮膚炎では角質細胞間のセラミドが不足しているため水分の保持能力が失われる。分かりやすく言うと、バリア機能が不十分!
表皮の異常表皮もバリア機能を果たしているが、その一つである細胞間にあるタイトジャンクションと呼ばれる接着構造が少ない。つまり、バリア機能が弱い!
炎症の機構バリア機能が弱い皮膚には外からバンバン抗原、アレルゲンが侵入してくる。そうすると色んな細胞が活性化して、サイトカインやヒスタミンが放出される。
かゆみ痒いと掻く、掻けば皮膚炎は悪くなる。負のスパイラル!皮膚の感覚過敏も発生する。知覚神経が角質の下まで伸びてくる。
その他交感神経、副交感神経緊張のバランス、精神および心因的要因、生活リズムの悪化

つまり、アトピー性皮膚炎の人は皮膚の表面のバリアー機能が人より弱い、ということ。じゃあ強くするには?次。

学校や会社にいるときは痒みを忘れているけど、うちに帰ってくると掻き始める患者さん多い。お風呂に入ったり、制服脱いだり、カバンを置いたり、リラックスすると、掻いちゃう


有病率

有病率
4ヶ月 12.8%
3歳13.2%
小学1年生11.8%
小学6年生10.6%
大学生8.2%
30歳代8.3%
40歳代4.1%
50,60歳代2.5%

大きくなると確かに減ってはいくけど、30歳代が8%、小学6年生が10.6%だとあまり変わらないような気もするねえ。でもさすがに40歳代以上は少なくなってるね。


診断基準

1,瘙痒(かゆい

2,特徴的皮疹と分布

①皮疹は湿疹病変

急性病変:紅斑、浸潤性紅斑(厚みのある赤み)、丘疹(ぷつっ)、漿液性丘疹(みずみずしいぷつっ)、鱗屑(うすい皮)、痂皮(かさぶた

慢性病変:浸潤性紅斑、苔癬化病変皮膚が厚くなって象さんの皮膚みたい)、痒疹かゆくてかたい塊)、鱗屑、痂皮

②分布:

・左右対側性:前額、眼囲、口囲、口唇、耳介周囲、頸部、四肢関節部、体幹

・乳児期:頭、顔から始まりしばしば体幹、四肢に、乳幼児期:頸部、四肢関節部、思春期、成人期:上半身(頭、頸、胸、背)に皮疹が強い

③慢性・反復性経過

乳児では2か月以上、その他では6か月以上を慢性とする。

  この診断基準、分かりにくいね。いっつも思う。当然のようにこれが頭に入って診察してるわけだけど、「う~ん、これは当てはまるな。何か月前から症状あるの?4カ月じゃまだ慢性じゃないな。」なんてチェックしながら診察してる人っているのかな?


次はいよいよ治療。大きく分けて、下の3つ。

①薬物療法

②スキンケア

③悪化因子の検索と対策、  ではまず①から、

薬物療法

        副作用
ステロイド外用年齢、部位、症状によってステロイドのランク、剤形(クリーム、軟膏、ローションとか)を選ぶ。長期外用による副作用:毛細血管拡張、易感染性(細菌、真菌、ウイルスの感染をきたしやすい)、多毛などに注意
タクロリムス外用細胞内のカルシニューリンを阻害する。2歳以上は0.03%、16歳以上は0.1%の使用、顔面、頸部の皮疹に高い適応あり。びらん、潰瘍面の使用はだめ。
コレクチム外用JAK阻害薬
非ステロイド抗炎症外用薬(NSAIDs)有効であるエヴィデンスなし。接触皮膚炎あり。
    抗ヒスタミン薬の内服                   補助的な役目、ロラタジンとセチリジンは妊婦も投与可能眠気、口渇
ステロイド内服
シクロスポリン内服顔面の難治性紅斑、紅皮症、痒疹結節に有効。長期投与に注意する。腎障害、高血圧、感染症に注意。
オルミエント内服JAK阻害薬
漢方薬消風散、補中益気湯
デュピクセント注射


アトピー性皮膚炎治療薬「コレクチ ム®軟膏 0.5%」(一般名:デルゴシチニブ)が、 2020 年 6 月 24 日より鳥居薬品から販売開始、0.25%も2021年6月13日に発売されました。

コレクチム®軟膏 は、細胞内の免疫活性化シグナル伝達に重要な役割を果たすヤヌスキナー ゼ(JAK)の働きを阻害し、免疫反応の過剰な活性化を抑制することでアトピー性皮膚炎を改善す る、非ステロイド性の世界初の外用 JAK 阻害剤です。
16 歳以上は 0.5%は適応、2 歳以上の小児は0.5%と0.25%が適応となり、小児では最初0.5%を使用し、軽快後は0.25%
に戻す、という使用方法になります。

主にステロイド外用剤の副作用が出やすい顔面、頸部に使用することになると思います。これまで同様の目的で使用していた「プロトピック軟膏 0.1%」(一般名:タクロリムス)では外用による刺激感、つまりヒリヒリ、ほてり、痒みが高頻度に出現していましたが、コレクチム軟膏はその刺激感が非常に少ないようです。



次はスキンケアですよ。次のページへ。