1,トリコチロマニアの子供達

沢山の自分の髪の毛を抜く子供たちがいた。
子供たちはストレスの原因どころか、自分がストレスを抱えているのかさえ分気づいていない。

小学校4年生の男の子、みるからにはきはきしている。
頭頂部に大きな脱毛がある。
週に3回野球、週に1回水泳を習っている。金曜日、土曜日、日曜日の夜は3連ちゃんだそうだ。
「大変じゃない?」って聞くと、子供は決まって「楽しい」って言う。
親も「子供が行きたいっていうんです」って言う。


元気に野球教室、水泳教室に行くけば親は喜ぶ。そこでさらにいい結果を出せば、さらに親は激励する。
疲れがたまっていることに気が付かず、親の期待に応えようとする。
子供にとって親が喜んでくれることほどうれしいことはない。
体が壊れ、心まで壊れ始める。

彼に「一度全部やめなさい。少し休んで、それでもまたやりたければやりな。」と言った。

母親にも「息子がこんなに疲れ果てて、髪の毛を抜いて、こんな状態になっているのにどうして気付かないんだ。」と責めてしまった。言い過ぎたかもしれない。母親は泣いていた。

言わずにはいられなかった。この時期の子供を守ってあげられるのは親しかいないから。

お利口さん、真面目な子、優しい子、人に気を遣う子が多い。
年齢が上になるほど、女の方が重症化しやすく、治りにくい。

2,舌なめずり皮膚炎

くちびるの周りを舌で舐めまわし真っ赤になってしまう。ストレスからくることもある。子供に「なめれば舐めるほど、どんどん悪くなるんだよ。」と話し、ステロイド剤を1日2回、プロペト(ワセリン)を食前、食後の6回プラス舐めたくなったら、合計10回以上塗る。「いいか、これは舐めたい自分と、舐めてはいけない自分との闘いなんだ!!5日間で治す!」と、子供の眼を見て脅すように話す。100人中98人は治る。

3,爪を噛む、陰部をいじる。

「この行為がストレスからきている可能性はある。でも自分の物なんだから、触りたきゃあ触りなさい。」と私が言うと、子供たちはちょっとびっくりして少し微笑む。辞められるならやめればいい。悪いことをしていると思わせないこと。飽きればいつかやめる。

2,リストカットの少女

15,6歳の可愛い少女、2年前から繰り返していて両腕に多数の真横の傷跡がある。この子の心にどれだけの辛いことがあったのだろうと思うと胸が苦しくなる。
リストカットはしてもいい。切って血が出ると何かほっとして、生きている実感が湧いてくる。
むしろ、生き続けるためにリストカットをする。
私には何もしてあげられない。この26年間で十分に分かっている。
「今あなたは何かで苦しんでいるんだね。」というだけしかできない。

いつになく深く切ってしまったと、彼女が来た。ぱっくりと傷が開いている。
「縫うよ。」って言ったら、彼女は泣いた。麻酔をかけた時も「痛い。」って泣いた。
自分で腕を切る時の方がずっと痛いはずなのに・・・。その時は痛くないのかな・・・なんて考えてた。

「次からは注意して浅く切りなよ。また縫うよ。」っていうと少し微笑んでた。

この無数の傷は一生消えることはない。
でも彼女が大きくなった時、傷の分だけ幸せになっていますように・・・。

3,引きこもりの優しい少年

私も他人の視線が怖った。話すきっかけがつかめなくて孤独だった時期もある。人間は怖いよね。
引きこもってしまえれば楽なのかな。楽じゃないのかな。何かきっかけがあれば、外に出ていけるのかな。
彼らは気が小さくて、傷つきやすくて、優しい。
引きこもれる場所があるから引きこもってられる?甘えてる?
人それぞれ原因が違うから、簡単に解決方法なんてないんだろう。
でも、一歩外に出てほしい。出ればなんか光が見つかるかもしれない。見つからなければまた引きこもればいい。

4,離婚後の母に甘えたい少女

離婚したばかりの母親に1か月に1度会えるんだけど、小さい兄弟が母親を独占しちゃうので、すごく寂しくてそのストレスで体をかきむしっていた。ちょうど自分の子供と同じぐらいの女の子、しばらく文通をした。お母さんに会ってうれしかった話が多かった。しばらくして手紙は来なくなった。彼女は今どうしているかな。

5,決して泣かない養護施設の幼児

開業したばかりのころ、自分の子供が3歳の時、高熱でうなされている幼児のわきにいるのは父親でも母親でもない。心が痛かった。彼らはどんなに辛い時も痛い時も泣かない。涙を流すのを忘れてしまったのか。涙が枯れ果ててしまったのか。泣ければいいのに。

6,虐待を受ける女児

父親も女児もアトピー性皮膚炎で通っていた。女児は幼稚園児。父親が娘を階段から突き飛ばしたり、裸のまま外に放り出したりするのだ。今から20数年前の話。母親もまとめて皆、精神状態が崩壊していた。3人とも精神科に紹介した。その後両親は離婚した。彼女は幸せにしているかな。

7、両親が死に一人になった少年

小6で母親が病気で死んで、父親と二人暮らしになったが、高校中退して引きこもりになった。高校の先生方が私に面談にきたこともあった。アトピー性皮膚炎はひどくなっていった。
私は自分が使わなくなったPCをあげたり、通信制高校を勧めたり、中卒でもなれる職業や学校を調べたりした。
あのころの私はちょっと異常だった。毎日彼のことを考え、診療中も何分も彼と話した。
でも彼は変わることはなかった。次第にお風呂も入らなくなって、異臭が漂うまま診療に来たりして、次第に私もあきらめていった。
その後なんと不幸なことに、父親も病気で死んでしまい、親せきに引き取られていった。

8、蕁麻疹

62歳の女性。義理の両親、夫、息子夫婦と3人の孫との同居で9人家族でほとんどの家事を担っている。最近、週に3日フルタイムで働きだした。「随分大変ですね。疲れてるんじゃないですか。」と聞くと、「いいえ、私なんて大したことしてないです。」と。夕方になると体が痒くなる。抗ヒスタミン剤の内服もあまり効果がない。この女性の場合、家族がこの女性の働きに対して、理解、思いやり、感謝の気持ちがないのだと思う。しかし、家族をその様にしたのは彼女自身でもある。あまりにも自分を卑下するのでだんだんイライラしてきた。

家事をする、育児をするっていうのは本当に大変なことだ。何が辛いかっていうと、評価されないこと。今の時代随分減ったとも思うが、それでもまだ「女がするのが当たり前」っていう考え、男尊女卑の考えは根深い。でも家族を説得する努力を惜しんではいけない。孤独であり、閉鎖的な空間で行われる育児と家事、終業時間も何もない。話さなければ分からないことが沢山ある。

彼女も、疲れた。と言わなければいけないのだ。20代、30代の若さで育児をした時と、60代では全く違う。周りが理解してくれないなら、理解させるように何度も何度も話すしかない。それでもわかってくれないような家族であれば、1週間家出をしよう。彼女が毎日やっていた仕事が、どんなに大変だったかがよ~く分かるだろう。