2012年の秋、イチジクをポケットに入れたまま作業していたおじいちゃんが、中のイチジクがつぶれて大腿部に皮膚炎を起こした症例を経験して「皮膚科の臨床」に報告したが最初です。皮膚科の一流の雑誌で、ほとんどが大病院の皮膚科医からの報告ですので、一開業医の論文を採用してもらえるか半信半疑でした。済生館の角田先生に指導していただき、acceptされた時は本当に嬉しかったです。その後の論文も10個目ぐらいまで角田先生に見て頂いていました。その後独り立ちをし、以後約10年間で90個弱の論文を書き続けました。

論文は症例の詳細、経過、検査結果、診断の根拠、治療、その結果、考察から構成されます。考察以外はそれほど難しくありません。考察を書くにはまずネタ集め。つまり過去の同様の症例報告を集めることです。昔は、図書館で1冊1冊探してコピーして、ない本は取り寄せてもらって、でしたが、最近はネットの「医学中央雑誌」「PubMed」日本皮膚科学会誌のJ-Stageでほとんど事足ります。それを読みあさっていると、最初はちんぷんかんぷんだったのが、徐々に色んなことがつながるようになってきます。次は文章を書く能力です。医学論文であっても、いかに注目してもらえるか、いかにこの症例が面白いのかを表現することが大事です。私が査読者から注意されるのは、文章が冗長にならないようにで、いかに簡略に決定打を打つかです。いまだに全くできません。

はじめから見込みのない論文は、1発目でrejectです。これまで30個ぐらいありますが、これが続くとさすがに心が折れます。査読者の訂正箇所とコメントが書いてあれば見込ありですが、そこから地獄の始まりです。幾度と郵送でのやり取りが始まります。けちょんけちょんにけなされることも幾多、何度もくじけそうになりました。acceptの葉書が来たときは、やっと終わった~、楽になった~という充実感、安堵感、達成感で満たされ、それが麻薬のようになりやめられなくなってしまったのです。一つの論文を書き始めてアクセプトされるまで約2~8か月、そこから掲載までが6~12ヶ月かかります。

開業医が論文を書くことは実際少ないです。何故なら論文を書く目的が、専門医試験を受けるため、大学内での地位向上だからです。私が論文を書いてもこれと言っていい事があるわけでもありません。
じゃあなぜ書くか。達成感、自己満足以外にもう一つ。開業医になるとその小さい医院の中の王様のようになって、誰も私を注意してくれたり、怒ってくれたりしなくなります。ところが論文を投稿すると査読者が、ダメ出しをし怒ってくれるのです。これが喜びでもあり、私の考え方、診断をチェックしてくれる人が現れるわけです。Mなんでしょうね。私は。

論文といっても私の場合、依頼論文3つと、統計2つ以外はすべて症例報告です。英文の雑誌でもありません。正直英語の論文にも5回ぐらいチャレンジしたのですがすべてrejectでした。たぶんこれからチャレンジすることはないでしょう。自分の身の丈を知っていますから。
一つの論文を書くことによって、たくさん勉強でき、知識は一気に増えます。この10年で少しづつ診断能力がついた気もしますし、少し自信もついてきました。
患者さんにお願いです。珍しい症例はぜひ論文を書かせてください。あなたの症例を勉強し、正しい診断ができ、世の中に報告し、皮膚科学の向上につながります!!ナーんちゃって、大げさな。人体実験か~。なんて言わないでね。

今年に入って、投稿雑誌を「臨床皮膚科」に変えましたが、急にacceptされにくくなり、今のところ2勝10敗と大苦戦しています。100個まで目前で大ブレーキですが、今後はゆっくり書くつもりです。1年1個で100まで行くでしょう。

掲載論文、題名だけ載せましたので、是非見て下さい。論文
黄色は薬疹、水色は接触皮膚炎、緑は腫瘍系、ピンクは依頼論文です。93、94は「臨床皮膚科」です。